どうも、サブロー(@saburo_design)です。

仕事で新幹線とかに乗ってて、車内で駅弁とか食べてると世にも奇妙な物語の『夜汽車の男』を思い出します。この話は主人公(大杉漣)がただ駅弁を食べるだけの話です。駅弁の中身も普通のそこら辺に売ってるやつです。

ただ駅弁を食べるだけなのにやたら印象に残ってる話です。世にも奇妙な物語『25周年記念 秋の2週連続SP 傑作復活編』で『ハイ・ヌーン』がリメイクされてましたが、個人的にはこっちの『夜汽車の男』をリメイクして欲しかったな~と思います。

今回はこの『夜汽車の男』のあらすじと見た感想を書いて行きたいと思います。

※この記事はネタバレを盛大に含みますのでご注意ください。

世にも奇妙な物語『夜汽車の男』

  • 夜汽車の男
    夜汽車の男

夜、トレンチコートに身を包み、ビニール袋を片手に汽車に乗り込んできた一人の男(大杉漣)。乗客の少ない車両には、ヤンキーのカップル、中年女性とその子供、新聞を読むサラリーマン。男が席を探していると後ろから何かがぶつかってきた。ついビニール袋を床に落としてしまう。振り返るとパトカーのおもちゃを持った男の子がいた。母親に叱られ席に戻る男の子。

ビニール袋を拾い、他の乗客からなるべく離れた位置に座る男。その時をじっと待っていた。『乗車券拝見致します』と乗務員が切符を切りに来た。男は軽く会釈をし乗車券を差し出す。これでもう邪魔は入らない…

男はビニール袋から何かを取り出す。駅弁だ。すばやく丁寧に包装を剥がし蓋を開ける。中身を見て思わずニヤける男。

  • 駅弁
    駅弁

定番のだし巻き玉子とかまぼこ…煮物はしいたけ、人参、かぼちゃ、きんぴらごぼう、ブロッコリーの天ぷら、漬物はしば漬け、そして何とも嬉しい存在のウグイス豆、ご飯には黒ごまと梅干がのっている…しかしこれらのおかずがいくら賑やかであったとしてもメインのおかずの盛り上げ役でしかない…

そのメインとは…レモン、千切りキャベツとレタスに添えられた二個のフライだ。この中身はなんだろう?考えられるのはカツ、または白身魚である。これは迷うことなくカツだと判断できる。なぜならば、もし白身魚だとしたらタルタルソースが付いているはずだからである。そしてもう一つのフライは…イカの…リング揚げ。

  • 二つのスタイル
    二つのスタイル

食事の仕方には、西洋式と東洋式の二つのスタイルがある。西洋式とはメインのおかずに向かって一品ずつ順番に片付けていく形式である。一方、東洋式とはメインのおかずを中心に進めていきながら、間に他のおかずを挟み込んでいく形式だ…。しかし俺が実践しようとしているのは、そのどちらのスタイルでも無い。俺…独自のスタイルとは…

だし巻き玉子を一口、しば漬けを一口、かまぼこを一口と、一見東洋スタイルに見せかけながらも、メインのフライには一切手をつけずに進めていく。そしてフライ以外のおかずを食べ終えたら、西洋スタイルの様に、メインのフライをじっくりと味わうというものだ。まずはカツ、そしてラスト…イカのリング揚げで締めくくる。そう…ラストはイカのリング揚げ…

  • イカのリング揚げ
    イカのリング揚げ

おかずの攻め方は決まったら次はご飯の攻め方だ。ポイントはおかずの塩分と脂肪分である。

  • ご飯の攻め方
    ご飯の攻め方

所要量の高いおかずほど、ご飯をたくさん必要とする。それを考慮し、それぞれのおかずに対するご飯の量を割り出していく。そうしておけばご飯とおかずのバランスが崩れる心配は無いのである。男は手を合わせ、

『いただきます』

男は他の乗客の視線を集めてしまう。しまった…ついいつもの癖が。だってご飯食べる時にはいただきますだろ?そして割り箸を割ろうとするが…

パキッ

あっ…割り箸を割り損ねてしまった…いきなり出鼻をくじかれるとは…しかし、動揺する必要など無い。なぜなら完璧なプランを立てているからである。

  • 駅弁を食べる男
    駅弁を食べる男

男はだし巻き玉子を一口かじる。予想通り無難な味だ。続いてしば漬け。これもまた無難…最初は無難な所から攻めるに限る。ご飯はなかなか柔らかい。ごまの量も多すぎず少なすぎずちょうどいい。そしてカマボコ……おお、これは意外だ。見かけと違ってかなりの歯ごたえがある。男は次に煮物に手をつけようとして…一瞬手を止める。

(そろそろちょっと冒険してみるとするか…)

ブロッコリーの天ぷらは初めてだ。…うん…ほんのり塩が効いている。俺としてはもう少し味が濃い方がいいのだが…。続いてきんぴらごぼう。…しょっぱい!しょっぱすぎる!ここはご飯一口の予定だが…もう一口食べたい。しかしそうするとご飯の攻め方を大幅に変えなければならなくなる。やはりご飯を食べるわけにはいかない。我慢するしか無いのか!?

  • ウグイス豆
    ウグイス豆

…いや手はある!ウグイス豆だ。この程良い甘さがしょっぱさを消し、ご飯を食べる欲望を抑えてくれる。しかし次の瞬間、箸から落下するウグイス豆。なんとか弁当箱で受け止める。まさかウグイス豆が箸から落ちるとは…黒豆なら分かる、豆の固さ、表面の滑り具合、実に箸から落ちやすい。しかしこれはウグイス豆だ。こんなミスをするなんて。やはり割り箸は慎重に割るべきだった。

そろそろ苦手なしいたけとカボチャを片付けておこう。食材の味を消してくれる濃い味付けが望ましいが、そうはいかない。すぐに梅干しを食べて、唾液の分泌をほどこし、後味の悪さを解消しよう。先程は歯ごたえを堪能したカマボコ。今度はしばらく口の中で転がしてみる事にする。

飾り切りしてある人参。こういう小細工は意外と嬉しい。ご飯としば漬けの相性は申し分ないが、お茶としば漬けも申し分ない。そう…ここで初めてお茶に手をつける。だって…ここからが本番なんだから…。いよいよメインを攻める時がやって来た。キャベツにマヨネーズにかけ、続いてカツにソースをかける。しかし…

  • アクシデント発生
    アクシデント発生

…これは…醤油だ!何故ソースじゃないんだ!?男はある事に気づきレタスをどかしてみると、そこにソースの容器が隠れていた。何故こんな所に…ちょっと待て…じゃあ醤油は何のために入ってるんだ?

俺としてはもう少し味が濃い方がいいのだが…

…あのブロッコリーの天ぷら用の醤油だったのか!確かに醤油はブロッコリーの隣にあった…でもこれじゃ間違えるに決まってるじゃないか!

冒頭の男の子とぶつかってビニール袋を床に落とした時の事を思い出す。

床に落とした衝撃でフライの横にあったソースがレタスの下に移動してしまったんだ!思わぬ誤算だ…誤算?まさかマヨネーズがタルタルソースの代用品なんて事…確かに野菜にかけるマヨネーズにしては量が多すぎる。つまりマヨネーズは白身魚用で、ソースはキャベツ用というパターンもあり得るわけだ。一体どっちなんだ…カツならソースをかけ、白身魚ならマヨネーズをかけなければならないと言うのに…。

  • フライの中身はカツか?白身魚か?
    フライの中身はカツか?白身魚か?

ちょっと待て。その前に、既に醤油をかけてしまった問題をどうするかだ。いやいや、この上にソースやマヨネーズをかけても何の問題も無いはずだ。これがもし醤油をかけようとしていたのに、ソースやマヨネーズをかけてしまったら、取り返しがつかない事になっていたかも知れない。例えば冷ややっこがいい例だ。ソースやマヨネーズをかけてしまったら、一巻の終わり。いや、本題に戻るとしよう。

(カツか…?白身魚か…?)

その時、怒鳴り声が響き渡る。パトカーのおもちゃで遊んでいる子供がうるさいと叱りつけるサラリーマン。その態度に突っかかる母親。乗務員が慌てて仲裁に入る。子供は泣き出していた。急に騒がしくなる車両。思考力が乱される。

  • 騒がしい車内
    騒がしい車内

(邪念…排除!)

全神経を研ぎ澄まし、目の前のフライに集中する男。…そして男はカツにレモンを搾り、その上にソースを一気に回しかけた。フライにかじりつく。結果は…

(…勝った!)

男は笑った。フライの中身はカツだった。読み切った。そして最後はイカのリング揚げだ。男にはイカのリング揚げに特別な想いがあった。幼少期、遠足に持ってきていた弁当を開ける。裕福ではなかったため他の子供達から隠れるようにこっそり白米だけの弁当を開けて食べる自分。そこに女の子やってきて一つのイカのリング揚げをくれた。

  • イカのリング揚げの思い出
    イカのリング揚げの思い出

過去を思い出し、思わず涙を流す男。慈しむようにイカのリング揚げを見つめ、そして口に運んだ。思い出を噛み締めるようにゆっくりと咀嚼する…

シャリッ…

思わずリング揚げを落としてしまう。呆然とする男。この食感は…リング揚げの中から顔を覗かせているのは…

  • リング揚げの中身は…
    リング揚げの中身は…

『…玉ねぎ?』

おわり

感想

邪念排除ってなんだよ

ただの駅弁にすごいこだわりがある男の話でした。作中では『いただきます』と『玉ねぎ…?』以外台詞がなく、全て大杉漣のモノローグだけで話が進行します。これはシリアスな笑いになるんでしょうか。駅弁の解説に無駄にCG使い出す所も面白いです。

カツか…?白身魚か…?の所はフライに箸を入れるなりなんなりして中身を見てみればいいのでは?と言うツッコミはもはや邪推の極みなんでしょう。

出てくる駅弁は別に美味しそうには見えない普通の見た目なんですが、大杉漣のモノローグと少しの表情だけでこっちも食べたくなるのがすごいですね

ちなみに私は東洋式のスタイルです。

原作者はあの『孤独のグルメ』の人です。黙ってひたすら食べるだけの作風はまさに『孤独のグルメ』に通じるものがあります。グルメ系の漫画やドラマが流行るずっと前だったので新鮮でした。

【原作・脚本】泉昌之『夜行』(単行本「かっこいいスキヤキ」収録)
泉昌之とは『孤独のグルメ』の原作担当の久住昌之と作画担当の泉晴紀による漫画家コンビ名。

機会があったら原作漫画も読んでみたいと思います。

↓ちなみに主人公役の大杉漣はこっちの世にも奇妙な物語にも出演しています。